こんばんは。
心理士の風間です。
怒りっぽい人と暮らすことは、パワハラ、モラハラを日々受けているのに近い場合があります。
ADHDのAさんに疲れ果てていたパートナーとの話し合いから考えていきます。
(事実をもとに編集)
家族の苦しさにではなく、ADHDの人の理解に焦点をあてています。
突然怒り出すAさん(30代男性)
「いきなり3週間、まったく口をきかなくなって、ごはんも食べないし。作ってあるのに。嫌がらせとしか思えない。」
パートナーは、Aさんに無視されることにとても傷ついていました。
怒りっぽいAさんは何を感じていたのか
理由は、「わたしが、ごろんと横になっているAの足をまたいだからだって言うの」
パートナーは「こんな理由でずっと口をきかないなんて、人間性が許せない」と感じています。
一方、Aさんは、この件に関して、ずっと思考がとまり、不安でいっぱい。パニックのような状態。
Aさんにとっては「またぐ=自分が大事にされていない」となり、それは、Aさんの地雷みたいなものだったようです。
Aさんは、怒って人を傷つけているのに、自分自身はとても傷つきやすい方。
そして、自分が傷ついたときにはだれかに怒りを向けています。
怒りっぽいのは、ADHDのせい?
AさんはADHDです。
怒りっぽさを、ADHDの症状としてみるとどうなるでしょうか。
①刺激への敏感さ
ちょっとした気配や音、光など、周りの人がキャッチしないことも感じ取っています。
熱い、寒い、痛い、うるさい、まぶしいなどですぐいらつくのは、Aさんにとっては極端に不快感が強いからのようです。
②ワーキングメモリーの低さ
急な変更や複雑な指示が重なると、頭がいっぱいになってしまいます。
たとえば、行くはずのお店が休みだったとか、混んでてすぐに店に入れないなど、予想と違うとすぐに腹を立てるのは、頭がいっぱいで余裕がないから。
③感情変化の激しさ
ADHDは、脳の前頭葉(ぜんとうよう)の働きと偏桃体の連携の悪さがあると考えられていてます。
これは、衝動や不安の抑えにくさと強い感情の起きやすさに関係があります。爆発しやすさと気持ちの切り替えの苦手さは脳の問題。
④過去の叱責からの傷つき
自己否定感が強くて、少しのミスが、ADHDの人にとってはとてもダメージになるようです。
偉そうにみえたけど、実は、失敗に弱くて傷ついていた。
⑤予期不安
また失敗するかもと思って、不安や緊張からパニックになりやすい。不安でいっぱいで怒っていた。
こうみると、Aさんの怒りっぽさは、単なる自己中心的な性格としてではなく、ADHDの特性に追いつめられた姿として映ってくるのです。
ADHDの方で、特性だけではなく、ほんとうに自己中心的な人もいるので、一概にはいえませんが、
Aさんの場合は、パートナーによると二重人格かと思えるほど、温厚で思いやる姿もあるようです。
だからこそ、身近な人は傷つきが大きいのですが。
性格ってなんなのか分からなくなってきます。Aさんの場合は、怒りっぽい人というより、ADHDの症状が強い人となるのかもしれません。
ADHDの人が怒りと向き合うには
ADHDの人は、通常の怒りとうまく付き合う方法だけでなく、
たとえば、まぶしさや音への配慮など、”これくらい普通”と思うような環境面の見直しも重要になってきます。
そして、傷つけられてきた身近な人ではなく、第三者を間に入れ、状況やそのときの周囲の人の気持ちの確認をしていく。
これが、関係修復のサポートになり、Aさん、疲れ果てたパートナーのどちらにも大切なのです。
怒りっぽいのを止めたいときに意識する4つのこと
落ち着いているときに、怒りでいっぱいになったときのことを話し合うのはよい方法です。
- 〇〇すべき思考がないか自分をみつめる。
- 正解、不正解以外にも答えはある。
- 怒りに気付く。
- 怒りを言葉で説明する。
ゆっくり、気持ちを整理することで、怒る以外のやり方が増える方が少なくありません。
怒りっぽさを調べてみる
Aさんは、どんなことに怒りやすいのでしょうか。何を求めているのでしょうか。怒りのパターンはあるのでしょうか。
- 自分が大切にしている考えを雑に扱う
- 人が効率悪いことをしている
- 自分の指示したた通りにしない
Aさんは、これらが怒りやすさに関係していると気付きました。気付きにジャッジはしません。
怒りっぽい人に必要なのは癒し
悲しい、寂しい、嫌い、悔しい、怒りもあってあたりまえの感情。どれも大切な自分のパーツです。
Aさんは、これをどう思っているか。どうして、そう思うようになったのかを話合います。
そして、怒りを”感情調節の難しさ”としてではなく、
”片付いていない思い”として、周囲との関係の修復と同時に癒しを得てほしい。たくさん傷ついているから。
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