臨床心理士が考える“助けてと言えない人”の心

「助けて」という言葉が、選択しにすらない

誰かに「助けて」と言えたらいいのにと思っていても、口にできない。なかには、その一言が選択肢にすらない。
そんな方は、少なくありません。

臨床心理士として多くの相談に関わる中で感じるのは、

「助けてと言えない人」は、決して、人に“頼れない人”ではないということ。

また、先の先を考え、他人を思いやる力があり、自分の気持ちを後回しにしてきた人が多いのです。

「助けて」と言えなくなったのには、理由があった

心理学では、助けを求める力を「援助要請行動」と呼びます。これは生きていくうえでとても大切な力のひとつです。

いままで「助けを求めても応えてもらえなかった」「頼ったことでかえってつらい思いをした」

たとえば、「弱音を見せたら、軽くあしらわれた笑われた」
「助けを求めたのに、分かってもらえなかった」

こんなことがあると、
心は自動的に“助けを求めること自体”を危険と感じるようになります。

体験自体を忘れてしまう人もいますが、それでも、やはり危険を感じるのです。

自分を責める必要はない

「助けてと言えない」ことを、気の弱さや意志の問題と感じてしまう人もいます。

けれど、それは心が自分を守るためにしている防衛反応―つまり、コントロールのきかない反応です。

助けを求めないほうが、安心があるのです。

結果として、それは、いままで、どうしていいか分からないときでも、一人で進んできた強さがあるともいえます。

少しずつ、“助けて”という言葉が戻ってくるために

「助けて」と言う力はあなたから消えていません。時間がかかりますが、少しずつ、信頼の感覚を取り戻していけます。

① “信頼の小さな練習”をする

いきなり信じられる人を増やそうとしなくてもだいじょうぶです。

信じるか信じないかのどちらかではないです。
「この人にはこれ言えそう」と、相手によって、違いがあってもいいのです。

そして、たとえば、「寒いね」「暑いね」のような、あなたが負担に感じないことから話していくのが練習になります。

② “感情を感じてもいい”と許す

感情を抑える癖がある人ほど、助けを求めにくいようです。

穏やかでいたいなど、理想の自分になりたくて、本音を根こそぎ否定してしまう人もいます。

感情には、優劣、善悪はなく、ポジティブネガティブどちらもありです。そのまま感じることを自身にゆるします。

それが“助けを求める力”を支える土台になります。

③ “助ける・助けられる”は、対等な関係

助けを求めることは「依存」ではなく、「人としてのつながり」です。
あなたが誰かを支えるように、あなたも支えられていいのです。

④助けるかどうかは、助けを頼まれた人が決めること

「助けてと言えない自分」それ自体をそのまま感じていきましょう。

頼んだら、迷惑をかけそうなどと、人を思いやりすぎていたかもしれません。

でも、助けを頼まれた人が、頼まれたことをするかしないか、それを決めるのはその頼まれた市と自身です。

頼まれた人の選ぶ力、自分を守る力を信じて、任せてもいいのです。

そして、頼まれた人は、あなたを助けないことを選ぶことも、ゆるされていいのです。

“助けて”といえない人がカウンセリングで得られること

カウンセリングは、理解される場所です。
話すこと自体が「自分を助ける第一歩」になります。

そして、助けてくれることを期待しないようになった過去の思いを、いまゆっくり、無理せず、終わらせていきます。

“助けて”という言葉を選べるぐらい、近くなる

回復してくると、人との関係の中で、
そのままの自分を安心して出せることが重なっていきます。

そして、他人のことも、自分のことも受け入れられる感覚が育っていきます。

遠かった“助けて”という言葉が、少しずつであっても、あなたに近づいてきますように。

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